1 番外

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呆然と見守る鬼太郎たちの前で、深呼吸するかのように身を起こす女禍。
天を裂く咆哮が響き渡ると、妖怪たちが磁石のように女禍の体に吸い付けられ、吸収されていく。
妖怪たちの命の光で彩られ、まるで美しいもののように輝く巨大な蛇。
「やつはおそらく完全に目覚めるためのエネルギーを必要としているんじゃ。逃げろ鬼太郎!」
重傷を負った鬼太郎は、吸収されていく目玉親父を追うことさえ出来なかった。



意識を失った鬼太郎たちを助けたのは、考古学者の今来野教授。
女禍を吸収を逃れたのは、鬼太郎・地獄童子・猫娘だけだったらしい。
常軌を逸し、研究室から姿を消した助手の行方を案じていた教授は、この事態を正確に理解できるただ一人の人間だった。
安田を止められなかった自責の念と、己の無力さに、うなだれる教授。
「まさか、本当に甦ってしまうとは…」
女禍が完全に復活すれば、その途方もない呪力に飲み込まれ、
日本はまるごと現世から消失してしまう。
「そうなる前に止めなくちゃ、誰かかが止めなくちゃならないんだ!」
とは言え、神を滅ぼすことなど一体誰に出来るだろう?
封印しなおす方法も見当がつかない。
教授は、命を顧みず戦いに赴こうとする3人に精一杯の知識を贈った。
「月読命は、アマテラスの力を借りたスサノオに封印されている。
つまり、対抗できる力は、その2神に由来するものだ。
君たちだけが吸収を免れた理由も、たぶんそこにある」









あまりにも強大な敵に戦いを挑んだ3人。どんな攻撃も全く通じず、虫を払いのけるように軽々と吹き飛ばされ、そのたびに手ひどい傷だけが増えてゆく。
その時、猫娘のポシェットから飛び出した手鏡から突然光が差し、女禍の触手を焼き切った。
「鏡?…そうか、分かったぞ!」

教授の言葉の意味をずっと考えていた地獄童子の頭の中で、1本の線が繋がった。
月読を封印したアマテラスとスサノオ、彼らの持ち物であった「三種の神器」と呼ばれる3つのアイテムは、勾玉・鏡・剣。
実は地獄童子は、そのひとつ「八尺瓊の勾玉(やさかにの まがたま)」の継承者だったのである。
そして、女禍の触手を焼き切る力をもつ鏡は、おそらくもうひとつの神器「八咫の鏡(やたの かがみ」)」の力を継承したものに間違いない。
やはり自分たちが吸収されなかったのは、月読にとって唯一の禁忌である力を身につけていたためだったのだ。
ではスサノオの剣は…?鬼太郎が何気なく言っていた言葉がその答えとなった。
「ヤマタノオロチ?以前、僕も戦ったことがある」




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